印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 画像情報:generated by 新書ページメーカー / Photo by Geo Darwin on Unsplash / フォント:源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。 「いやあ、それにしても本当に可愛らしいですねえ。なるほど、確かに思わず食べてしまいたいくらいです」 「……それもいいかもしれませんけど、このままだと腹壊しますよ。ハイダイさんのとこに連れてって、活きのいいうちに捌いてもらいましょう」 「ああ、そうですね。小生ドラゴンの扱いには自信があるのですが、残念ながら調理はまだしたことがございませんですし……」 「ミガルーサの切り身やヤドンの尻尾は定番の食材ですが、この子はどんな味がするんですかね。楽しみです」 大の男達が二人、真剣な面持ちで神妙に話し込む。 不幸にもヒト語を詳細に解するだけの知能と経歴とを併せ持ってしまった哀れなシャリタツは、その小さな体を恐怖でぶるぶると震わせた。 ※ 今でこそオージャの湖でブイブイいわせている(……と、本人ならぬ本ポケは自負している)シャリタツだが、その生まれは意外にもヒトの手によるものだ。 小柄な体躯と高い知能が愛玩ポケモンに向いているのではと見込んだ未認可ブリーダーが安易な気持ちで繁殖させてみたはいいものの、小粒な山椒はぴりりと辛いのが世の常である。そもそもシャリタツというポケモンは、ドラゴンタイプの名に恥じない矜持の高さゆえに馴致の難しい種の代表格だ。少なくとも、不勉強なトレーナー未満が何の覚悟もなく携わっていい存在ではない。 退かない、媚びない、省みない。 字面にすれば気高く勇ましいことこの上ないが、かれが生み出された目的からすれば、そんなプライドは何の役にも立たないどころか不適格にも程があるというものだ。
最低限、放逐されても生き抜けるだけの力量があったことは幸いと言うべきか。││つまるところ、よくある話であり、本筋には何ら関係のない話でもある。 そしてそんな野生のシャリタツは、今、ムクホークの力強い脚に押さえ付けられ文字通り絶対絶命の危機を迎えていた。 ※ 四天王兼教師のハッサクと、四天王兼ジムリーダー兼リーグ営業部所属のアオキ。二人揃って完全にオフな休日、というのは決して皆無ではないが、かと言ってそれほど多いわけでもない。そんな貴重な一日を贅沢に使って、二人とポケモン達はオージャの湖畔でピクニックと洒落込んでいた。 サンドウィッチ作りに精を出すアオキの傍らで、ハッサクはスケッチブックへと絵筆を走らせる。陽光に照らされてきらめく湖面に、木々の緑も鮮やかな風景画。そこに時折、愛しい家族達の肖像をこっそりと紛れ込ませたりしながら。 そんなハッサクが、青空に映えるカラミンゴの翼を写しとるべく絵筆を走らせていた、その時だった。 ゆったりと寛いでいたカラミンゴが、ぱっと顔を上げてハッサクの方……正確には、ハッサクの後方、ピクニック本拠地の辺りを見据える。 ││がっしゃん! 次の瞬間、大きな音と共に、ポケモンの技と思しきエネルギー波の残光が視界の隅を焼く。ハッサクは竜使いだ。それが《りゅうのはどう》であると即座に判断するのは容易いことだった。 間髪を容れずに振り返る。そこには、組立式のテー
ブルが無惨に崩れ落ちた光景が広がっていた。 「アオキ! 大丈夫ですか!?」 「自分は特に……ですがすみません。昼飯が……」 全身の羽根を膨らませていきり立つムクホークの傍らで、アオキが普段通りの淡々とした調子を崩すことなくぼやいた。 なるほど、確かにアオキの言ったとおり、卓上をふんだんに飾り立てていた食材達は見るも無惨に地べたへと転がっている。だが、目に見える被害はそれ以外にはどこにもなく、ハッサクは跳び跳ねた鼓動をどうにか落ち着け、肺の底に淀んだ不安を溜め息に変えて吐き出した。 「ああ……というか、何が起きたのです? 今のはドラゴンタイプの技でしたですよね?」 「それが、……こちらのお客さんが犯人のようです」 言いながら、アオキがムクホークの足元を指し示す。 「メシー! オレノー!」 取って付けたようなヒトの言葉もどきの叫び声が、威勢良く響き渡った。小さなヒレが、土埃と枯れ草にまみれた切り身フライをひっしと抱きかかえる。パルデアの誇る小さな賢竜こと、シャリタツだ。 「ああ、これはまた……派手にやってくれましたね」 「おかげさまでパンも具材も全滅ですよ。……どうします? サンドイッチの代わりに焼きおにぎりにでもしますか?」 自分、握るのも焼くのも得意ですよ。 物騒なことを口走るアオキの眼差しは相変わらず黒く深く、その奥底に宿る表情はどこか窺い知れない。が、そこは連れ立って長いハッサクの観察眼である。 間違いない。あれは本気の目だ。 何よりも連れ合いに甘い自覚のあるハッサクではあるが、いたいけなシャリタツがムクホークの脚で揉みくちゃにされるだけに留まらずチルタリスの《かえんほうしゃ》で程よく炙られパフュートンに《のしかか
ら》れてぺったんこになってしまうのは、流石に偲びなく感じられた。アオキの意向を最大限以上に汲むことにかけてはハッサクにも引けをとらないかれらである。それくらいのことは何のためらいもなくやってのけるだろうことは、あまりにも想像に容易い。 が、そんなハッサクの余裕は次の瞬間いともあっさりと消し飛ぶことになった。 「こらこらアオキ、こんな可愛い子に向かってそんなことを言うのは││」 「オレ! スシ!」 再び《りゅうのはどう》が撒き散らされ、その一筋がアオキのすぐ横を掠めてゆく。咄嗟に躱すことができるだけの観察力と判断力がアオキに備わっていればこそ、シャリタツの放った烈光はその頚元の薄皮を切り裂くにとどまった。それでもアオキのシャツの襟元には、僅かに赤い色が散らされる。 それを認めた瞬間、ハッサクの瞳が剣呑な色を帯びた。 「……いやあ、それにしても本当に可愛らしいですねえ││」 そして、冒頭に戻るというわけである。 ※ セグレイブも真っ青な凍てついた笑みを浮かべるハッサクの傍ら、冷静さを取り戻したアオキは「このシャリタツ、その内《バブルこうせん》を使えるようになるのでは?」とのんきなことを考えていた。 泡を吹くシャリタツはすっかり威勢のよさを失くして、ただ己に下されるだろう処断を待つばかりである。アオキ自身つい調子に乗ってハッサクの言葉に合わせてしまったが、流石にやり過ぎだろう。 「ハッサクさん、そろそろ勘弁してやりませんか……
🍊🌳と🍣🐉ちゃん小話(4/8)
以前とある素敵なタグ企画をお見かけして書き始めたはいいものの、中途半端になっていたものをどうにかまとめたものです。
🍣ちゃんかわいくていじめたくなっちゃう。