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Posts by Etsuko Oshita

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『旅のつばくろ、ふたたび─飛び立つ季節─』 沢木耕太郎 | 新潮社 私は、またひとつ、旅をしたい土地が増えたことを喜んだ──。世界中を旅してきた著者が、心の声を聴き、気の向くままに日本全国を巡る。初めての一人旅で訪れた男鹿半島、小泉八雲に思いを馳せながら歩いた松江、吉永小百合と語り合った

【読書日記】沢木耕太郎『旅のつばくろ、ふたたび――飛び立つ季節――』(新潮文庫、2026年)

『深夜特急』であまたのブックパッカーを誕生させた沢木も、もうすぐ傘寿! まずこの事実に驚いた。

本書では、旅の舞台は日本。16歳の東北周遊旅行で足を踏み入れた秋田の思い出がしんみり温かい。16歳の沢木は秋田でヒッチハイクも経験した。わたしも大学サークルの合宿で、岡山の備中国分寺に向かってだかそこから戻るんだかで田舎道を自転車で走っていたら、ご近所のおじさんが自転車ごと軽トラに載せて運んでくれたことがあった。旅の大家である沢木と少しでも重なる経験があるのは、素直に嬉しい。

2 days ago 0 0 0 0
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『ブルースだってただの唄』藤本 和子|筑摩書房 筑摩書房『ブルースだってただの唄』の書誌情報

【読書日記】藤本和子『ブルースだってただの唄』(ちくま文庫、2020年)

『塩を食う女たち』(岩波現代文庫)に続き、オーラルヒストリーとして素晴らしい作品だ。それぞれ立場も環境も事情も異なる黒人女性たちだが、共通する苦しみと問題はある。それをどう処すかは十人十色。

"Passing"(肌の色が薄いため白人として黒人が生きること)への姿勢もそれぞれなのだな、と感じ入る。アメリカで生きていくうえで白人で通るなら、そっちのほうが楽じゃないかと思うのだが、あえて黒人というアイデンティティを前面に出して抗う者も少なくない。トニ・モリソンの名作短篇”Recitatif”をあらためて読み直したくなった。

2 days ago 0 1 0 0
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朝日新聞出版 最新刊行物:文庫:うたかた 花魁・夕顔の推理を頼りに、遊郭内での事件を次々と解決してきた隠密廻り同心の木島平九郎は、体調不良のため出仕できなくなってしまう。夕顔は、代役の新人同心とともに、...

【読書日記】戸田義長『うたかた 吉原面番所手控』(朝日文庫、2025年)

江戸末期の吉原、花魁、夕顔は体調を崩して見世から離れた寮で療養中だ。そこに、新人の同心、湯田余七郎が名探偵である夕顔に難事件を持ち込んでは彼女の推理を聞いて……というお話。

この湯田のキャラクターが物語を面白く回している。昔は子だくさんで、彼も明らかに両親が望んでいなかった子どもだった(名前からもそれがわかる)が、それがついて回る。そして発言や行動の端々からも、それが窺える。彼も、そして夕顔が生きて、守ろうとした江戸という時代も、もうちょっとしたら終わったのにな、と切ない気持ちになる。

4 days ago 1 0 0 0
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時間を持て余す入院患者や家族のために院内書店を……絲山秋子さんが空想する書店 【読売新聞】 私はこれまでに3回入院した。双極性障害で精神科に5ヶ月、 頸 ( けい ) 部 ( ぶ ) の良性腫瘍の手術で1週間、足首の骨折と手術で18日間。少し落ち着いてくれば時間が長く感じられ、本が読みたくて仕方がなかった。だ

4月12日の読売新聞に寄稿した「空想書店」こちらで全文読めるようになりました。

おすすめの5冊
おすすめした本は以下の5冊です。
①『沈黙の螺旋理論 世論形成過程の社会心理学』(E・ノエル=ノイマン著、池田謙一・安野智子訳、北大路書房)
②『モリナガ・ヨウは土木を描く』(土木学会 土木学会誌編集委員会編 彰国者)
③『声でたのしむ 美しい日本の詩」(大岡信・谷川俊太郎編 岩波文庫別冊25)
④『カモノハシの博物誌 ふしぎな哺乳類の進化と発見の物語』(浅原正和著 技術評論社)
⑤『全国むかし町めぐり』(株式会社G.B.)

www.yomiuri.co.jp/culture/book...

5 days ago 35 8 0 0
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パリのガイドブックで東京の町を闊歩する 2 読めないガイドブック 友田とん著パリのガイドブックで東京の町を闊歩する 2読めないガイドブックある日、啓示のように降ってきた「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する」という言葉を、どうやったらそんなことができるのだろうかと考えながら、実践するエッセイシリーズ。荻

【読書日記】友田とん『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する2 読めないガイドブック』(代わりに読む人、2020年)

「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する」とはなんぞや、と思ったが、これを読む限り、パリのガイドブック片手にパリを思い描きながら東京を歩く……のではない。パリのガイドブックを日本で買い求めるため、そしてそれに付随した出来事を解決するために東京をさすらうのだ。パリの出来事といえば、ノートルダム大聖堂の火事が登場するくらいか(あとは、黄色いベスト運動がちょこっと)。そして、著者はパリのガイドブックを読み始めるも、目が滑って読めないのである。あるよねえ、そういうこと。

1 week ago 0 0 0 0
『男の皮の物語』 - THOUSANDS OF BOOKS 男になれる「皮」を手に入れた18歳のビアンカ。 親が決めた許嫁はなんとゲイ!! しかも男になったビアンカと…!

【読書日記】ユベール原作、ザンジム作画『男の皮の物語』(井田海帆訳、サウザンブックス、2025年)

フランスのアーティストがルネッサンス期のイタリアを題材にしたというのがユニークだ。当時のイタリアではカトリックの教義が絶対で、同性愛なんてもってのほか。ところが主人公の箱入り娘ビアンカのいいなずけジョヴァンニはゲイの男性で……。

「男の皮」ひとつで、男性側と女性側を自由に行き来するビアンカがたくましい。皮を着用してジョヴァンニの心を探ろうとしたら、ジョヴァンニがビアンカの変装版ロレンツォにベタぼれしてしまい、そこからてんやわんやになるが、最後のビアンカの選択肢が現実的だったのに感心した。

1 week ago 2 1 0 0
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機械ぎらい 機械音痴のテクノロジー史 - 集英社新書 【新しいものを使いこなせないあなたへ】モバイルオーダー、オンライン予約、セルフレジ、最...

【読書日記】速水健朗『機械ぎらい 機械音痴のテクノロジー史』(集英社新書、2026年)

「機械へのもっとも基本的な対処法は慣れることだ。文句を言わずに従っていれば、いずれ使い勝手の悪さにも慣れてくる。だがむしろ、現代のソフトウェア・サービスは、こちらが慣れたころに新しい方式を導入してくる」。まさしく。

「迷宮化する飲食店のタッチパネルとQRコード注文」のくだりに、激しく首肯する。店側の負担と手間を減らしたいためのしくみなのはいいが、その負担と手間が、以前以上の負担と手間を客側に強いている。LINE経由で注文するレストランには驚いた。わたしはその時点でもう客になれなかった。

1 week ago 2 0 0 0
チョプラ警部の思いがけない相続|ハーパーコリンズ・ジャパン 世界中の優れた書籍を日本にお届けする、世界第2位の総合出版社の日本法人です。

【読書日記】ヴァシーム・カーン『チョプラ警部の思いがけない相続』(舩山むつみ訳、ハーパーBOOKS、2023年)

インドの「今」が垣間見えて、犯罪小説としても現代風俗小説としても、二度おいしかった。アンチガンディー派がいるとか(主人公がそう)、映画で観た「エンカウンター」(警察が超法規的措置で犯人を射殺すること)が実際にあるんだとか、シャー・ルク・カーンの家がどこどこにあるとか。三大カーンのうち、アーミル・カーンが登場しなかったのは、彼だけちょっと毛色が違うからなんだろうか(サルマンは出てきた)。

1 week ago 1 0 0 0
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アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? :カトリーン・キラス=マルサル,高橋 璃子|河出書房新社 アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? アダム・スミスが研究に勤しむ間、身の周りの世話をしたのは誰!? 女性不在で欠陥だらけの経済神話を終わらせ、新たな社会を志向する21世紀の経済本。20カ国で翻訳、アトウッド絶賛。

【読書日記】カトリーン・キラス=マルサル『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? これからの経済と女性の話』(高橋璃子訳、河出書房新社、2021年)

経済学の話でもあるが、ケアの物語でもある。男女問わずの文脈で語られる経済学の話だが、実は相当に男性的な話で、それを陰で支えているのはもっぱら女性だ、ということが忘れられがちだ。このタイトルは実にうまい。

女性と男性の「違い」(上下関係なし)を、都合よく「差」(上下関係あり)としてとらえたばかりに、女性が経済的にも社会的にも見えないところに追いやられてしまう構造が描かれる。違いはあくまでも違いでしかない。

1 week ago 2 2 0 0
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顎十郎捕物帳(下) -久生十蘭 著|中公文庫|中央公論新社

下巻の表紙はこちら。

2 weeks ago 0 0 0 0
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顎十郎捕物帳(上) -久生十蘭 著|中公文庫|中央公論新社 へちまなりの顎をぶらさげた、北町奉行所例繰方見習・仙波阿古十郎。難解な怪事件に鮮やかな推理で大活躍。探偵小説史に残る、本格ミステリ捕物帳の傑作。

【読書日記】久生十蘭『顎十郎捕物帳(上下)』(中公文庫、2026年)読了。

本名は阿古十郎なのに、顎が茄子並みに長いばかりに陰で「顎十」などと呼ばれる主人公だが、推理力は、ライバルの南町奉行所の藤波友衛がどうしても勝てないくらいピカイチ。上巻の表紙は顎十だけど、下巻の表紙は顎が普通だ。これは藤波かしら。

せっかく甲府に仕事を見つけたのに田舎だからと逃げ出して、叔父に江戸で仕事を見つけてもらっても長続きしなくて、最後は駕籠かきになるが、人生楽しそうに生きている。せっかく推理しても、手柄はたいてい人にあげてしまう。こういう人に、わたしはなりたい。

2 weeks ago 0 0 1 0
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【映画日記】ブライアン・シンガー監督『ユージュアル・サスぺクツ』(1995年)@シネマリス

ブライアン・シンガー監督はこれを30歳のときに撮ったのか。すごいな。フェアかアンフェアかといわれれば、限りなくアンフェア寄りだろうけれど、そんなことはどうでもいいし、観ているうちに真の黒幕は薄々見当がつくけれど、それでも大満足。

べ二チオ・デル=トロはチンピラの役が似合う年頃だったんだな。マクマナス役のスティーヴン・ボールドウィンの、ちょっと焦点が合ってないような青い目がこれまた役にぴったりだった。でもいちばん印象的だったのはガブリエル・バーン。

2 weeks ago 0 0 0 0
ホテルに閉じ込められたロシア貴族の人生を描く希望の物語『モスクワの伯爵』(エイモア・トールズ、宇佐川晶子訳)文庫版、2月18日発売 | 特集- 早川書房オフィシャルサイト|ミステリ・SF・海外文学・ノンフィクションの世界へ 早川書房オフィシャルサイトのページです。当サイトでは、ミステリ、SF、海外文学、ノンフィクションの名作から最新刊まで、幅広いジャンルを網羅した書籍の情報を提供しています。 作家インタビュー、イベント情報、電子書籍の配信など、読書体験を豊かにする多彩なコンテンツが充実。 読者の皆様に愛される作品を届け続けてきた私たちの歴史やこだわり、最新の刊行情報もお楽しみいただけます。 早川書房の世界を、こちらの...

【読書日記】エイモア・トールズ『モスクワの伯爵(上・下)』(宇佐川晶子訳、ハヤカワ文庫、2026年)

原書は”A Gentleman in Moscow”というタイトルで2016年に刊行。

主人公の伯爵の個人史でありながら、彼を取り巻く人間から知るロシア史、ソ連史でもある。折に触れて入る脚注が近代史メモとして秀逸だ。

伯爵と時折「楽しい」時間を過ごす女優の存在がなかったら、この小説はここまで面白くならなかっただろう。体制の波と付き合いつつ、完全に迎合することなく、社会も生き延び、キャリアを築いた賢い女性だ。最初の印象が最悪だっただけに、ここまで変わるとは思わなかった(笑)。

2 weeks ago 3 2 0 0
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名探偵の有害性 - 桜庭一樹|東京創元社 名探偵の有害性 かつて、名探偵の時代があった。ひとたび難事件が発生すれば、どこからともなく現れて、警察やマスコミの影響を受けることなく、論理的に謎を解いて去っていく正義の人、名探偵。そんな彼らは脚光を浴び、黄金時代を築き上げるに至ったが、平成中期以降は急速に忘れられていった。

【読書日記】桜庭一樹『名探偵の有害性』(東京創元社、2024年)

無自覚でもじゅうぶん有害だし、人によっては正義が有害になり得る、ということをあらためて突きつけられる。「冗談だから」なんていう保身とか「あなたのためを思って」なんてお為ごかしは余計なお世話、まっぴらごめん、ということを、かつての名探偵の助手である中年女性が気づく物語。

かつての名探偵と彼女は名探偵コンビだったこともあったのだ。しかし時代とジェンダーと彼女の性格のせいで、いつのまにか「助手」になっていた。そんな彼女が、ゆっくりと自分の脚で立ち、自分の口で意見を言い、自分の手で人生をつかみとってゆく。

最後の一文が効いている。

3 weeks ago 2 0 0 0
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脚光を浴びる日本文学の人気翻訳家、ポリー・バートン 先日、ロンドンの老舗書店フォイルズで開かれた国際交流基金の日本文学のイベントに参...

ラッシャー貴子さんの”England Swings!”はなんと今回が最終回。

その最終回がポリー・バートンという、主に日本の女性小説家の作品を英語に翻訳する名翻訳家の話で、まさに時宜を得た内容です。ポリーさんのエピソードも面白く、ロンドンで日本文学が浸透している(ブームとは書きたくない)現地レポートとしても読み応えがあります。

最終回を飾るにまさにふさわしい内容だと思います。

3 weeks ago 0 0 0 0
ヴァシーム・カーン著『チョプラ警部の思いがけない相続』書影

ヴァシーム・カーン著『チョプラ警部の思いがけない相続』書影

www.harpercollins.co.jp/hc/books/det...
ヴァシーム・カーン『チョプラ警部の思いがけない相続』ハーパーコリンズ・ジャパン

警察官最後の日にして主人公が受け取ったのは、亡きおじから子象を相続したという通知だった。何をバカなと最後の出勤日を終えて帰宅すれば、象がいる。
自分の家に象がいる。

どうしよう、警官最終日にして殺人事件の捜査に手を付けてしまったばかりなのに_。
大都会ムンバイで退職したての元警部チョプラの七転八倒な活躍が始まった。

インドを舞台にしたコージー・ミステリって趣で、微笑ましく楽しめた。

@libro.bsky.social

4 weeks ago 12 4 1 0
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女の家 -日影丈吉 著|中公文庫|中央公論新社

【読書日記】日影丈吉『女の家』(中公文庫、2020年)

1961年の作品で、裏銀座(文中では銀座2丁目となっている)が舞台。わたしは築地に近い、新橋寄りの、料亭や小料理屋が軒を並べる通りを頭に浮かべていた。

とある会社社長の二号さんが、自宅のガス事故で死亡した。当初は、自殺かと思われたが、刑事のとある発言から殺人の可能性も浮上したが……。

「結 状況と理由」は、解決らしきものが提示されているが、それも曖昧で、解釈のひとつにすぎない。それだけに、読者の空想というか妄想が広がっていく。被害者の生前の生活や生き方を見ると、自殺でも殺人でも、見方によっては成立する。そこが面白い。

4 weeks ago 3 0 0 0
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【演劇日記】『流白浪燦星 碧翠の麗城』@新橋演舞場

今回は運よく花道のすぐ脇の前から一桁台の席が取れた。残念ながら入り口から見て花道の左手だったので、演者はたいてい後ろ姿だったのだが、豪華絢爛な衣装を細部まで堪能できた。瀬織姫の婚礼衣装や、弾正の衣装がまあ凝っていて凝っていて。ルパンが泣くシーンは、愛之助がほんとに泣いているのがわかった。峰不二子は相変わらずちゃっかりと効率のいい仕事ぶりで、ワーカホリックの日本人は、みんな不二子を見習うべきだと思う。

ルパン作品もジブリ映画もほとんど知らないわたしでも、最後に銭形が放った名台詞は知っていた。あ~楽しかった。

#ルパン歌舞伎

1 month ago 0 0 0 0
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『わがクラシック・スターたち 本音を申せば』小林信彦 | 単行本 - 文藝春秋 好きだった名画は、何度でも見よう 渥美清や植木等、喜劇人たちの素顔から、ニコール・キッドマン礼賛、定点観測する夜のラジオまで。「週刊文春」好評エッセイ19弾。『わがクラシック・スターたち 本音を申せば』小林信彦

【読書日記】小林信彦『わがクラシック・スターたち 本音を申せば』(文藝春秋、2017年)

ずっと追いかけていたシリーズで、文庫がぱたりと出なくなりずいぶん気にしていたが、昨年だったか、本書を偶然見つけてびっくり仰天した。ありがたいことに、このシリーズは過去作が全部リストアップされており、文庫化されたか否かもわかるのだ。本書から、1作を除いて単行本のみになっていた。

かつての仕事仲間、とくに井原忠高と渥美清のくだりは、思い出が深くて濃いのだろう、筆運びも鮮明だ。この年に小林の『おかしな男 渥美清』がNHKでドラマ化され、渥美清を演じた柄本佑を褒めている。

1 month ago 1 0 0 0
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増補 復興の書店/稲泉 連|岩波現代文庫 - 岩波書店 本は「生活必需品」だった──東日本大震災後からの復興に向けた書店の苦闘を描く名著に能登地震の取材記を増補。解説=日野剛広 稲泉 連 著

【読書日記】稲泉連『増補復興の書店』(岩波現代文庫、2026年)

東日本震災後、それでなくても経営が厳しい書店は真っ先になくなる……ふつうならそう思うだろう。だが、避難所で、そして震災後の生活で、人々が必要としたのは本であり、雑誌であり、書店だった。人はパンのみにて生きるにあらず、はほんとうだったのだ。

しかし、やりがいだけでは商売は続かない。店主も生きていかなければならない。釜石市の桑畑書店の店主は、店舗の再建を断念した心境を吐露する。

「うん、諦めるのはさ、もちろん悔しいですよ。(中略)人生にはいろんなことがある。それはそれで仕方がない。状況に応じて別の生き方をしないといけない」

1 month ago 2 0 0 0
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映画『オーロラの涙』絶賛公開中

【映画日記】『オーロラの涙』(2024年)@新宿武蔵野館

オーロラはスコットランドの巨大通販倉庫でピッカーとして働くポルトガル出身の女性。彼女に関する個人情報はそれだけだ。シェアハウスに住み、同僚のポルトガル人女性に通勤は車に同乗させてもらう。食事や休憩もほとんど会話に加わらず、スマホが相手だ。

ちょっと言葉を交わしたピッカーの男性、通勤時に車に乗せてくれる同僚、シェアハウスのポーランド人の男性……彼女にひとときの安らぎを与えてくれる人は、たいていすぐいなくなる。しかし、ひとときだけの安らぎでも、それを支えにオーロラは日々生きてゆく。ささやかな希望と安らぎが人生を前に進める動力なのだ。

1 month ago 0 0 0 0
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『本に狂う』草森 紳一|筑摩書房 筑摩書房『本に狂う』の書誌情報

【読書日記】平山周吉編『本に狂う 草森紳一ベストエッセイ』(ちくま文庫、2026年)

博覧強記の本好きの話は、読んでいて実に楽しい。JJおじさんこと植草甚一と重なる部分が多く、同病相憐れむで仲良しか、もしくは同じ極どうしで反発するかのどちらかだろうと勝手に思っていたが、植草のほうが先輩で、仕事等を通じて交流があった。草森は、植草がマンガの評論を書き始めたので、自分はマンガについて語るのをやめたそうだ。草森が植草の自宅に行くときに必ず迷って「ほうほうの体」でたどり着いた(これは誤用ではなく草森独自の使い方)ときの「焼き飯」とビールの話を読んで、チャーハンが無性に食べたい。ついでにビールも。

1 month ago 0 1 0 0
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怒り(下) 新装版 -吉田修一 著|中公文庫|中央公論新社

下巻はこちら。

1 month ago 1 0 0 0
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怒り(上) 新装版 -吉田修一 著|中公文庫|中央公論新社

【読書日記】吉田修一『怒り(上下)』(中公文庫、2016年)

つかみどころのない真犯人よりも、その真犯人を取り巻く人々の心情や行動がリアルだった。極論を言えば、犯人は3人の誰でも成り立っただろう。否、この真犯人以外の人物のようが、読んでいる側もまだ納得がいったかもしれない。

真犯人ではない2人の男が逃走している(定住しない)理由が身につまされる。とくに、親の借金を肩代わりさせられてヤクザに追いかけられている男が、最後に「ムラ」の力で助けられる、というのは喜んでいいのか、どうなのか。助かったのはいいのだが、その後「ムラ」に縛られる人生が目に見えている。それはそれでいいのかもしれないけれど。

1 month ago 2 0 1 0
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【高座日記】『桂米二兜町ひとり会第2回』@アートスペース兜座

「河豚鍋」、「初天神」、中入りときて小佐田定雄作「火事場盗人」というラインナップ。

今回、初めて知った言葉に「やいと」がある。話の流れでお灸のことだな、と見当はついたが、「焼いと」とでも書くんだろうか。帰路、夫に「やいとって灸のこと?」と聞いたら「せやで」と言い、頼んでもいないのに、「アルプス一万尺」の替え歌で「やいとの歌」を、朗々と夜更けの日本橋で歌った。この替え歌が、小学生男子がいかにも考えつきそうな歌詞でくだらなすぎて、今も思い出し笑いしている。

余談だが、最初か着替え後か忘れたけど、師匠の羽織の裏地が素敵だったな。

1 month ago 0 0 0 0
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ぜんぶ本の話 | 毎日新聞出版 ページをめくれば溢れだす、しあわせな時間と家族の思い出。さあ本の国へ旅にでよう――。本書は、文学者の父・池澤夏樹と声優、エッセイストの娘・池澤春菜のふたりが、「読書のよろこび」を語りつくした対話集です。

【読書日記】池澤夏樹、池澤春菜『ぜんぶ本の話』(毎日新聞出版、2026年)

春菜の「本は買うものと思っていなかった」(父親の蔵書と献本とプレゼントされる本でこと足りる)とか、本の時間無制限ビュッフェとか、本に囲まれた恵まれていた境遇を描写する語彙がもう的確で。

理系の夏樹はわりと理詰めでものごとを見ている。村上春樹のついては、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』以降はあまり熱心に読んでいないそうで、その理由のひとつが文体が飽きたということ。もうひとつは、『ねじまき鳥クロニクル』で、科学的に絶対にあり得ない現象を堂々と描写しているからだそうだ。

1 month ago 0 0 0 0
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「#確かな情報を得る訓練」3DAYアクションを行います - Bluesky Blueskyは「#確かな情報を得る訓練」として、情報の「拡散」ではなく「見極める力」を養う3日間の取り組みを行います。災害時に備え、情報の受け取り方を平時から整えることを呼びかけます。

情報が速く広がる時代、災害や非常時に必要なのは拡散ではなく見極める力です。
Blueskyは3月8日(日)〜10日(火)の3日間、「確かな情報を得る訓練」3DAYアクションを実施します。
混乱時に備え、信頼できる情報源を探してフォロー・ブックマーク。そして、あなたの見つけた情報源やヒントをハッシュタグ #確かな情報を得る訓練 をつけて共有しましょう。

▼詳細はこちらのブログ記事で
bsky.social/about/blog/0...

1 month ago 3658 1989 238 56
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災害後には間違ったことで不安をあおる話や、いいかげんなうわさ話である「災害デマ」がSNSで流れがちです。
地震雲や地震予知がその典型です。

災害デマに振り回されないために知っておきたいことをまとめました。

ぜひご一読ください。

#確かな情報を得る訓練

1 month ago 416 198 0 0
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映画『センチメンタル・バリュー』公式サイト 第78回カンヌ国際映画祭 グランプリ受賞 『わたしは最悪。』ヨアキム・トリアー監督 こわれた親子――いつも、愛が まるつぶれ『センチメンタル・バリュー』2.20Fri ROADSHOW

【映画日記】『センチメンタル・バリュー』(2025年)@109シネマズ二子玉川

ダコタ・ファニングがどういう使われ方をするのだろうと興味津々だった。結論、ものすごくよかった。ノルウェーという地で異分子(アメリカ人の大物女優)で浮きまくっていることこの上ないが、それを承知で真剣に役に取り組み、結果的に自分では荷が重すぎる、自分に向いていないと降板する人物というのは、ハリウッド映画ではなかなかあるまい。

娘たちが幼いころに家を出ていった巨匠である映画監督の父の身勝手さも故あってのことだった。

大人になってからの親子関係の修復の難しさを示しつつ、どう折り合いをつけていくのか、を考えさせる佳作。

1 month ago 1 0 0 0
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【イベント日記】『私の真ん中』 @渋谷キャストアパートメント

作家の温又柔さんのトークイベントだ。温さんの作品は、読み終えたあとに、いつも「命を削って書いている」印象を受ける。昨日の対談で、この作品を書いたのは、「宙づり」の自分を助けるために書いた、書いている自分も必死だった、という話が出てきて、納得がいった。

対談終了後、サインをお願いし、本を買ってからずっと気になっていたアホみたいな質問を思い切ってしてみた。
私「これ、新世界の通天閣みたいですけど」
温さん「違うよ~(大笑)」
そばにいらした編集者さん「京都タワーともよく言われます」
私「いや、京都タワーは構図が違います(きっぱり)」

1 month ago 0 0 0 0