『Le Problème avec les fantômes(幽霊たちとの問題)』読了。仲のよかった男女5人組のうち、唯一の少なくとも見た目は男性の人が亡くなってその後、残された4人のうちの一人の家に彼の幽霊が現れるようになった。親しい人物の喪をめぐる話。
一応フランス語教員として何よりも興味深かったのはいわゆる包括書法で、男性とか女性とか区別しない書法で、例えば三人称単数でielとか複数でielsとかいうのだが、正直この使い方をこの作品を読むまでわかってなかった。日常的なフランス語でこの表現ってどの程度使われているのだろうか。
Posts by Atsushi KUMAKI
『La dernière maison juste devant la fôret(森の手前の最後の家)』読了。確かこれはFnac賞のファイナリストに選ばれたもの。自分を美男子だと思っている主人公が娼婦に惚れて追い回すうちに逃げる娼婦はその主人公の実家に入り込んで…という話。
Rue de Sèvresという出版社から出ていて私のイメージとしてはわりととがったというか表現として新しめのイメージがあったのだが、この作品はちょっと絵柄の古さを感じる。ただ話があまりに無茶苦茶でそういった古さはあまり気にならなかった。
『Gorm(ゴルム)』読了。タイトルは主人公のバーサーカーの名前。soppと呼ばれる黄色い液体に触れるとめちゃめちゃ強くなるのだが、それで狩人が殺され、そのため主人公がその仲間に追われるという話。主人公はアスタと呼ばれる娘を守りながら、娘自身はそのことに不満でいろいろやらかす。
先ほどの『保安官セシル』のようにかなり大胆な線で、キャラとしてはGod of warみたいなんだが、この絵柄のおかげで今これを書く瞬間までGod of warのことは思い浮かばなかった。
『Cécile la Shérif(保安官セシル)』読了。表紙を見た感じで、以前読んだ『Les Maudites(呪われた者たち)』に似た感じかなと思ったけど、だいぶ違った。裁判官の娘のフランス人がアメリカにわたって保安官として活躍する話。ウエスタンかと思ったら、かなり毛色が違った。
あとがきによればフランスの法曹界における女性の地位がテーマになっているようで、ならなぜアメリカなのか、ということだが、それはウエスタンというジャンルのバンドデシネにおける強さと、それだけフランスでの女性の地位が厳しい、ということなのかもしれない。
『La Fille du Bois Tordu(よじれた森の少女)』読了。タイトル通りよじれた森と呼ばれる場所に住んでいる少女が呪われた家と呼ばれるところに住んでいて、途中から獣人となった老人と『野次馬レビュー』とかいう雑誌のカメラマンがその家を訪れて…という話。
続刊があるということでその家を離れるところで話が終わっているが、このままいろいろ旅するとなると長い話になる可能性あるかも。気になったのはなんか日本のマンガみたいなキャラ付けがされているところだった。途中で出会うエクトプラズムの男性とか、主人公がドイツがフランス語が話せず片言でだんだんちゃんとしたフランス語になっていくところとか。
『À la frontière du vivant(生死の境目)』読了。ジャーナリストのジャンヌが姉だか妹だかに勧められてエクラン国立公園の山岳地帯の植物多様性を取材することになり、山登りや植物学の専門家などに助けられて、作品としては山岳地帯の植物相などについて学べる感じになっている。
私の関心からしてちょっと面白かったのは、作者の一人セドリック・ダンタンという人が主人公が紹介された植物学者として登場している点と、私が以前読んだ『エールフロワド』に出てきた登場人物が「『エールフロワド』に出てきた人」として紹介されてたことだ。フィクションとノンフィクションが入り混じっている感じがある。
『Bordeaux / Shanghai(ボルドー/上海)』読了。上海の事業家のドラ息子がボルドーに送られて親が所有しているワインメーカーで奮闘するという話。原作者のマルク・エセルサルという人が警察ものとかアンダーグラウンドなものを書いていて、その延長で読んだのだがそういうものではなかった。
面白かったのは色によって言語を変えていたという点だ。赤字が中国語、黒字が英語、青がフランス語と区別されている。主人公の青年はフランス語が解らずボルドーでは基本的に英語=黒字で会話している。すごくシンプルなアイディアだがよく考えたらこういう措置は日本のマンガでは見たことない。
『Le Visage du Créateur(創造者の顔)』読了。これ今読まなきゃいつ読む、って感じで読んだ。今回は成功のようだが、派手な失敗をしたチャレンジャーの話。私の世代だと名前はぱっと出てくるが、映像はあやふや。多分ニュースとかで見たことあると思うんだが。
十年後に漁師の網にチャレンジャーの破片が引っ掛かり、漁師が若い相棒に顛末を語るというかたち。「爆発まで○○日」というのが頻繁に出てきて『100日後に死ぬワニ』を思い起こさせた。タイトルの「創造者の顔」というのは爆発後にレーガン大統領が詩を引用し「彼らは創造者の顔をに触れるために地球を飛び立とうとした」的なことを言ったところから。
『Les sentiers d'Anahuac(アナワクの道)』読了。アナワクとは今のメキシコシティ一帯。アントニオという先住民がベルナルディーノというフランシスコ会の人にある意味スカウトされ、アステカの文化や歴史などを書き記しをする中で、自分たちの過去を振り返っていく話。
最初白黒かと思いきや主人公だけが色がついていて、どうやらキリスト教に帰依していない者が白黒になっているようで、主人公もしたがって途中から白黒になっていく。だけど長老から先祖の過去の話を聞くと色を取り戻していく。ただ途中からそういう区別がはっきりしなくなるのがまだちょっと読み取れていないが、このあたりの演出は興味深い。
『La mise à mort du tétras lyre(クロライチョウの死)』読了。正確には「死刑」だろうけど、ちょっと違和感あったので。小さいころから父親に山に連れていかれていた男性がリヨンで公募に落ちまくるアーティストになって…という話。山編とリヨン編が交互に描かれる。
作品内ではタイトル通りのシーンが出てくる。実際に山でクロライチョウを打ち落とすシーン。父親に無理やり猟銃を持たされて撃つのだが、それが大きなショックとなる。他方でリヨンでは当初そこはかとない主人公のホモセクシャルな方向性が描かれ、それがいわば両者を結びつけていく。
『À travers la nuit(夜を通じて)』読了。ある日突然姿を消した女性をめぐって、縁のある4人の男女が彼女の親と会い、彼女と過ごした場所を訪れるという話。過去と現在の出来事が明確に区別されず、あたかも消えた彼女が今もいるかのような演出になっている。
ストーリーと直接関係ないのだが、いわゆる包括的書体を使っている点が驚いた。代名詞ielsを使っているバンドデシネ初めて見た。このことが演出上も機能していて、とりわけ主人公のCharliの性が見た感じあやふやなこととある種の相乗効果を持っている。
『Danser avec le vent(風と踊る)』読了。素晴らしいというか、いろんな意味で参考になった。いぜんの作品でTAAFと呼ばれる南極近くのフランスの領土に行った作者が、改めてその一部のケルゲレン諸島にARTEという独仏のテレビ局の取材陣を引き連れて行った話。
いうまでもないのだが、動物たちがよい。あまり人が住んでいないこともあってか動物たちが警戒なく近づいてくるみたいで、そのあたりが十全に描かれている。ただ動物好きには厳しいシーンもあって、人間が持ち込んだ猫が害獣化しており、それを駆除する仕事をしている人も描かれる。
『Ma vie sans Billie(ビリーのいない生活)』読了。かつて読んだ『ハイイロガン(Les Oies cendrées)』の作画の人が書いた作品。水泳のコーチをしている主人公のもとにビリーという(たぶん)女性がやってきて母親が危篤だと告げて…という話。
まあ平たく言えば毒親の話ではないだろうか。ちょっと読んでつらさが出てくる。『ハイイロガン』でもそうだったが、人物造形は単純化されてて、(特に主人公の)表情もそれほど豊かではないのだが、逆にそのことによって感情の強度を感じた。
『Karl(カール)』読了。疎遠だった父親が亡くなって、その原因がLife companionと呼ばれるお手伝いロボットが車の運転中事故を起こしたということで、ロボット(アンドロイド)が被告になって裁判を受けるが、主人公の女性はそのロボットにだんだん愛着を持っていくという話。
全体をおおう色調が素晴らしい。穏やかなポストアポカリプスという感じ。おそらくアンドロイドに意識があるか、的な話はSFの文脈では多く語られるのではないかと思うが、SF的な感じではなくこのように描かれるのが非常に印象的だった。
『Super A』第02巻読了。第01巻では動物に変身できるようになった兄妹の妹がどっかに行っちゃったのを兄が探すという話だったが、今回も同じ。かんしゃくを起こした妹が夜中に姿を消してそれを兄が追う。私は電子で読んだがぜひ紙の本を買うことをお勧めしたい。電子だと見開き表示ができない。
このシリーズは子供向けということで、動物の生態とかを読者に学んでもらうようになっている。今回はコウモリやトンボの知覚が物語に組み込まれていて、そのあたりの描写も面白かった。場合によっては紙の本を買いなおすかもしれない。
『L'Héritage fossile(化石遺産)』読了。fossileって古臭いとかいう意味だと思うが、この作品では実際に人体が石化するのでこういう訳に。人が住める星を求めて宇宙飛行士たちがコールドスリープを繰り返しながら航行する。他方で荒野のような星を歩き回る二人の姿が並行して描かれる。
今回はこれが一番面白かったかな。まず絵柄が背景をどうやら3Dを駆使して描かれており、何というか人間の力ではどうすることもできない敵な雰囲気がよく描かれていたと思う。ある意味で描かれている星は砂漠のようなところで、そういった観点からも興味深い。
『Goldorak(ゴルドラック)』読了。『UFOロボグレンダイザー』と邦訳するのははばかられたので『ゴルドラック』と。今年は50周年かな。リメイクかと思ったら後日譚だった。テレビシリーズが終わった後、主人公のアクタリュスが燃え尽きというか罪悪感というかで戦えなくなった話。
戦えなくなったといっても敵のヴェガが攻めてきているので戦わなければならなかったのだが、ある意味「戦後」ということでは『Shin-zéro』と近いのかなと感じた。それにしてもフランス人ゴルドラック好きだなあというのが前書きとあとがきからうかがえる。
『Je reviens dans six mois(半年後に戻る)』読了。第二次世界大戦後仏領ギアナに単独で探検した実在の人物であるレイモン・モンフレの渉外を「自由な翻案」で描いたもの。実家を離れる際、父親から半年連絡がなかったら捜索願を出すからと言われて、タイトルはその返事。
とにかくひどい。作品ではなく彼の生涯が。作中もしきりに言われているが、当時仏領ギアナの森を単独で歩くというのは自殺行為のようで、とにかく飢えがひどい。フランスでどれだけ知られている人かわからないが、ある程度行く末を知っている人もいると思うが、そのような結末となった…。
『La Boîte(箱)』読了。自伝的バンドデシネということでわりとよく名前を聞く作品。30ページ弱と非常に短い。前の晩に電話をして明日会おう見たいなことを言っていた彼氏が自ら命を絶ったと連絡を受け、動揺し悲嘆にくれる主人公の話。とにかくずうっと泣いている。
表紙の焦げた食パンみたいなのが何なのかよくわからなかったが、これがタイトルの箱らしい。彼氏との思い出の品が入った箱で、表紙のこの主人公の視線が何というかいろいろ物語っている感じ。
『Hypersurveillance(過剰監視)』読了。久しぶりにルポルタージュもの。恋人と旅行の話をしていたら両方のFacebookのアプリでギリシャの島への旅行が勧められた。ことをきっかけとしてスマホが監視されているのではないかとインタビューなどを始めるという話。
ペガサスとかケンブリッジ・アナリティカとかニュースになってた時は怖いなと思ってたけど、これ読むまでほとんど忘れていたことに気づいた。こわい。私が気になったのは主人公で名前からして作者(原作者)の人と違ってどうやら純粋にフィクションの人物のようだ。実在の人物の場合とどう違うのだろう、というのが気になった。
『Le Tombeau de la comète(彗星の墓)』読了。いやこれも素晴らしい。前に読んだ『地球か月』には帯にバブレの推薦文があったが、私としてはこちらの方がバブレっぽいと感じた。彗星が落ちて謎の巨大生物が人間を襲うようになり、人間もそれに対抗してか巨大ヒト型兵器を操れるようになる。
それで彗星が落ちたクレーターを目指して旅をするという話。何よりも戦闘シーンがかっこいい。移動するときは巨大兵器に乗っていくのだが、戦闘では離れて操る。敵がわざと輪郭などをぼかしているのだと思うが、そのおかげでなんだかよくわからないがすごい迫力になっている。
『Lady Nazca(レディ・ナスカ)』読了。ナスカの地上絵の保存や解釈に寄与したマリア・ライへの物語を去年公開された同名の映画および史実から自由な発想で描かれた。映画とのタイアップでもあるのだろうか。彼女は地上絵の線の延長上に夏至のときの日の入りの位置があることを発見したようだ。
それだけだとなんであの絵になったのか説明がつかないのであまり納得はしないが、それはともかくここもやはり砂漠だった。バンドデシネは砂漠が好きなのだろうか。ただこの物語では砂漠は何もない空間ではなくある種の権力闘争の場としても存在していて、その点は新鮮だった。
『Glitch(グリッチ)』読了。なんとなくSF的なものを予想していたが違った。主人公は日本でいうところのあるゲームのRTAをやってるゲーム配信をよく見ていて、あるバグを使った裏技を見つけて配信者に連絡するがなかなか再現できなかったのだが、それを機に配信者と仲良くなっていくという話。
ここでのグリッチは一義的にはゲーム内のバグのことだが、作品中では主人公の何というか心の動揺だったり不安だったりを表現している。主人公はレユニオン出身の学生で、変な名前の大統領が奨学金を廃止したため実家に帰れなくなってしまうというのが絡められているも面白かった。
『Terre ou lune(地球か月)』読了。いや素晴らしい。前に読んだOFFと同じくらいかそれより面白かった。地球が汚染されて月に入植したら思いのほかうまくいって逆に月の人々が地球からの入植を禁止したという設定。主人公の母親が主人公に父親を毒殺させばらばらになったところから話は始まる。
主人公は鳥好きでそれが高じて月の鳥類保護のNGOにインターンをするのだがそこで月のいろんなところを探検したりする。それで表紙にある巨人を見つけたりするがそれが何なのかは次の巻で、ということだろう。ストーリー的にも家族の秘密と月の秘密というミクロとマクロが混ざり合って明らかになっていく感じがよい。
『OFF(オフ)』読了。タイトルはおそらくturned offということなのかな。太陽フレアの影響で電気が全く使えなくなったベルギーを舞台として、のちに首相になる防衛大臣、その弟の警官、その友人、この事件で亡くなった国王を引き継いだ女王などを各章で主人公とした物語。
今回まとめて読んだ中でトップクラスに面白かった。そういえばバンドデシネで政治関係の話ってノンフィクション的なものや戯画的なもの以外は結構少ない気がする。もっと読んでみたい。脇役で極右の政治リーダーが出てきて「国を割ってしまおう」とか言ってかなりベルギー的だなと思った。
『Le Serment(宣誓)』読了。タイトルはヒポクラテスの誓いのことだろうか。闇医者的なことをしている主人公のもとにヴァンパイアになってしまうから直せという男がやってきて、その後その男を追ってきたヴァンパイアの集団とバトルになるという話。
全体的に暗めな色調で、ヴァンパイアなので昼は力が出ない的なシーンもあるがそれも暗め。ストーリー的にはだいたい解決した後エピローグがありそこで話の続きがあるようなことがほのめかされている。とはいえ続巻がある旨明記されていないのだが、これは売れ行き次第で、ということなのだろうか。
『Tunnels(トンネル)』読了。家族で車で旅行して、帰りにあるトンネルを通ったら謎のレースに巻き込まれる、という話。レースの相手はみなフルフェイスのマスクにつなぎで、話が通じない。やがて出口のトンネルを見つけて元の世界に戻るがその際に長女がつかまり行方不明になってしまう。
レースの相手はみなへんなセリフをしゃべっていて、これってフランス語ネイティブの人はなんとなく何言っているかわかるのだろうか。ストーリーとしては、一応完結していると思うが、いろんな謎が謎のままでもうちょっとどうなっているか知りたいなと思った。
『Manhattan Driver(マンハッタンドライバー)』読了。クルマということで。事故で養父をなくした元レーサーの主人公が生き別れになった息子を探してニューヨークにやってきて、いろいろあってタクシー会社でメカニックを経てドライバーになり、その後自分の実の父親のことを知り…という話。
何より色遣いが新鮮だった。多分クレヨンだと思うが、この感じが見知らぬ土地に来て驚くべき事実を知ることになる主人公の居心地の悪さというか非現実感というかとよく結びついているように思う。過去作も読もうかな。
『Juste après la vague(大波の直後に)』読了。サンドリーヌ・コレットの小説をベースに、とある。小さい島に大家族が暮らしていたが、水位が上がって暮らせないとのことで大地を探して船を出すが船が小さいので3人の子供を置き去りにしていってしまう、という話。
船関係ということで読んだが、家族が全員乗れないということで船というよりボートという感じか。それだけに高波にのまれたりするときのおそらく現実にはあり得なそうなうねるような波に乗る船というのがみられる。
『Dewi(デウィ)』読了。前に読んだVegaの娘の物語。前作では娘は死んでたのだが、死後娘の遺伝子からクローンが12体作られ、そのうちの一人が主人公。ずっと前作に出てきたオランウータンとのミックスのもとにいたが危険を感じ彼女を中国の施設に送り、AI猫と一緒に暮らしていた。
そこでずうっと監視されていたのだが、オランウータンミックスとともに逃げ出して日本に向かう…というところで話が終わっている。明示されてはいないが続編は出るでしょう。今回は前作と違って白黒だが、同様の作風でより黒が際立つ感じになっている。この作画の方はもう一冊だしているようなので近いうちに読むかもしれない。